TWSイヤホンの電池選定では、「片側に何mAh必要か」という質問から話が始まりがちです。しかし、容量だけでは答えは決まりません。電池がイヤホン本体に収まるかどうかは、長さ・幅・厚さに加え、封止部、タブ、コネクター、組み立て余裕で変わります。実際の再生時間も、音量、通話時間、無線通信、待機時消費電流、充電方法に左右されます。
容量比較の前に、収納スペースを測る
電池収納部の三次元寸法、許容できる形状、タブの向き、コネクター位置、組み立て余裕を電池メーカーに共有してください。外形寸法が似ていても、封止幅やタブ、保護部品の位置が違えば、そのまま置き換えられないことがあります。狭長形状や不定形のスペースには、形状を調整しやすいパウチセルが候補になります。円形の収納部と組み立て構造が決まっている製品では、コインセルが適する場合もあります。どちらが優れているかは、機構設計によって変わります。
mAhだけでなく、負荷条件を伝える
通常再生時の平均電流、通話や無線送信時のピーク電流と継続時間、残量が少ないときの最低動作電圧を確認します。候補セルの寸法と保護回路を前提に、電圧降下と実使用時間を評価してもらいましょう。急速充電を検討する場合は、充電器と電源管理回路、充電電流、温度上限、使用環境も提示します。「急速充電対応」やCレートだけでは、セル、保護回路、製品の放熱設計が適合するとは判断できません。最終構造で充電プロファイルと温度を確認します。
安全性と左右のばらつきを仕様にする
小さな筐体では電池とユーザーの距離が近くなります。過充電、過放電、過電流、短絡、温度に対する保護方法を仕様で明確にし、部品が限られたスペースに収まるか確認してください。パウチの封止やタブ接続は工程検証に含め、工程評価なしに手作業のはんだ付けを前提にしないことが大切です。UN 38.3など適用される輸送関連資料は、採用するセル型番と一致させます。
左右セルの容量や直流抵抗の差は、電圧の挙動や残量表示に影響します。量産前に抜き取り方法、ロット追跡項目、ペアリング基準を決めておくと、「高い一貫性」という曖昧な要求より管理しやすくなります。充電、温度上昇、落下、経時劣化、異常条件の試験は、最終筐体と保護回路で行います。
見積もり依頼で伝える情報
電池収納部の図面、目標再生時間、再生と通話の比率、ピーク負荷と継続時間、充電条件、温度範囲、予定数量を伝えてください。セルの形状、容量、負荷を一緒に検討でき、試作評価も具体的になります。収納寸法やピーク電流、充電方法が未確定なら、パウチとコインの比較より先に条件を整理しましょう。
TWS用電池は、容量表から最大値を選ぶだけでは決まりません。限られたスペースで、寸法・負荷・充電・保護が製品要件を満たすかを確認する設計作業です。条件を具体的に伝えることで、試作品の評価が実際の課題に答えてくれます。

